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傘はある

健康で文化的な愛にあふれた生活

友人(目の奥が死んだ不幸なギャル) 4

深夜1時、友人(目の奥が死んだ不幸なギャル)から電話がきた。

「もしもし?男に心は開かずとも股は開くでおなじみのわたくしですが…」
開口一番、自己分析がしっかりとできている前口上だった。
アラサー女にとってなにより尊い時間とも言えるお肌のゴールデンタイムに電話をかけてくるのは迷惑極まりないが、話の切り込み方がとてもおもしろかったので彼女の話を聞いてあげることにした。

「第4出動(©︎東京タラレバ娘)です」
え…? 恋の話、だと…?
ハァァァァァァアアアアアア??!?!!?
驚いた、驚きすぎて深夜にも関わらず実家だということを忘れて大声を出してしまった。
彼女からの電話の内容なんて
「胸騒ぎがしたので調べてみたら元彼が捕まっていた」
「マンションの隣の部屋の男がわたしの玄関のドアの前で立ちションしてる」
「お蕎麦って電子レンジがなくても作れる?」
「よくわかんないんだけど富山で水商売をさせられそうになってる」
など至極どうでもよくて、いい大人なんだからしっかりしろよと言いたくなるようなことばかりなのに、まさか恋の話だとは。

彼女が今まで好きになった男たちは皆、女にだらしがなかったり働いていなかったり法に触れていたり、いかんせん碌でもない。
彼女自身も難ありで、わたしに「金の絡まないセックスでどうやって興奮するの?」と真顔で尋ねてくるような人間だ。
だからわたしは、どうせ今までと同じようなクズで頭の悪いクソ野郎だろうと高を括っていた。

しかし今回はそうじゃないらしい。
いきなり身体を求めてきたりせず、安定した職に就いていて真面目な好青年らしい。
「でもね」
「でも何?」
「37年間実家から出たことない彼女いない歴=年齢の童貞なんだよね」
「ハイ!!!一発アウト〜〜〜〜〜!!!!!」
「だよね、アウトだよね」
「アウトどころか恐怖でしかない」
「しかもね」
「しかも何…?」
「服がめちゃくちゃダサイ」
「それは我慢しろよ」
「ダサくてもいいけどダサイくせにこだわりがあるのは無理」
「どんなこだわり?」
「白いTシャツの裾におびただしい量のフリンジ」
「普通の白いTシャツを着ろよ」
「黒いスキニーにおびただしい量のファスナー」
「普通の黒いスキニーを履けよ」
「あと麦わら帽子をかぶってる」
「ルフィなの?!!?!」
「小さい頃に実家を出てるルフィの方がまだマシだよ」
ワンピースの世界に実家の概念を持ち込まないでほしい

「わたしさぁ、今後どうすればいい?」
「もう4時半だし昼から美容室だしもう寝たい」
「寝ないで!!!アドバイスして!!!」
「遠いところから長ーい棒で蜂の巣をつつくように遊びなよ」
「サイテーなアドバイスかよ」
「きっと君はわたしが今言ったような行動をとると思うよ」
「わたしさぁ、前にあばちゃんは占い師か気象予報士みたいって言ったよね」
「言ってたね、そんなつもりないけど」
「前言撤回するわ、アンタは会話の中で他人をマインドコントロールすることに長けた呪術師だよ」
「そんな物騒な」
「自分が今やさしい彼氏とラブラブだからって好き放題言いやがって!そうやって調子に乗ってると東京タラレバ娘みたいになるからな!」
ひどい言い草だ。
わたしは東京タラレバ娘の原作漫画が好きで読んでるけれどあんな風になるわけないじゃないか。
彼女はわたしに図星を突かれた悔しさから、負け犬の遠吠えのような捨て台詞を残して電話を切った。

その後少しの仮眠を取り、寝不足で重たくなった身体を引きずりながら美容室に行った。
7年ぐらいずっと切ってもらっている美容師さんは彼女と知り合いなので、この話をした。
美容師さんは「相変わらずだね〜」と言いながら笑っていた。
8ヶ月ぶりの美容室で、友人の悪口で盛り上がりながら綺麗にしてもらう、サイコーかよ。

「はい!完成!かわいくなったね〜!」
鏡を見たら、東京タラレバ娘の鎌田倫子がそこにいた。

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どうやら、親友の呪いは即効性があるらしい。