傘はある

健康で文化的な愛にあふれた生活

お土産の才能

お土産のセンスが壊滅的にない友人がいる。

彼女は服も髪型も鞄も靴もいつもかわいくて使ってる文房具にだってこだわってるし、好きな作家さんや音楽もなんかオシャレだし、誕生日をはじめとする結婚や就職のお祝いのプレゼントも相手の好みに合ったなかなか素敵なものを送る。
なのに、それなのに、お土産のセンスだけがまるでない。

センスというか、才能がないんだと思う。
神様が経営する人間工場で、才能ライン担当の作業員が彼女の"お土産の才能"を入れるとき別の作業員に話しかけられてしまったに違いない。
「えーっと、"お土産の才能"の規定量は10〜15gだから…」
「おーい!お前今月の交通費の申請したかー?」
「え?!あれ今日までだっけ?!おれ出してねぇや!事務さんに言いに行かなきゃ!………あっ!やべぇ!"お土産の才能"入れ忘れた!もうライン通過しちゃったよ!」
「バッカお前なにやってんだよ!工場長にバレたら始末書もんだぞ!」
みたいな感じで。

彼女とはかれこれ10年以上の付き合いになるが、わたしは過去に2回もお土産の件で本気で怒った。

1回目は彼女が研究室の研修で行った奈良から帰ってきたとき。
そのときは千葉で働いていた友人の帰省と時期もかぶっていたのでそれも兼ねてみんなでごはんを食べに行こうということになっていた。
高校時代みんなで学校をサボってよく通っていたファミレスでお互いの近況や昔話で盛り上がった。
しかし、奈良のお土産を持ってくるという友人が来ない。
「明日早いから…」「ごめん、このあとバイトの飲み会で…」と1人帰り、2人帰り、人数がだいぶ減った頃にようやく彼女はやって来た。
アホか、クソ遅いわ。
「ごめんね〜あっこれお土産!みんなで食べよ!」
彼女が出したのは"鹿のふんチョコ"。
明石家さんまさんがパッケージに描かれている、小さい袋のチョコスナック菓子。
ふざけんなよ!!!!!
みんなでどっかでごはん食べようって話になってたのに小包装になってないやつがお土産とかどんだけだよ!!!!!
ここは個室なんてないチェーン店のファミレスだぞ!!!!!!
そもそも予定してた人数考えろよ!!!!!
この程度の量なんて1人でペロリだろうが!!!!!!

2回目は彼女が青森旅行から帰ってきたとき。
「青森行ったんだよね〜!お土産にリンゴ買ってきたからみんなで集まって食べよ!」と連絡がきた。
わざわざ"みんなで集まって"と言うぐらいなんだから相当な量のリンゴがあるんだろう、きっとたくさんリンゴを食べることになるだろうから夜ごばんは我慢しておこう、そう思った友人たちが十数人集まった。
しかし彼女が持ってきたリンゴは2個半。
わざわざ招集をかけて、腹ペコの成人男女十数人に対して、リンゴは2個半。
いやいやいや!!!!!!
少なすぎるだろ!!!!!!!
こっちはダンボール一箱ぐらいのリンゴ想像してましたわ!!!!!!
あと"半"ってなに?!!?!!
もう"半"はどこ行った?!!?!!!
「半分は研究室の後輩たちに振る舞った〜」
いやいやいやいや!!!!!!
それなら1個まるまる降振る舞えや!!!!!
リンゴの半分だけ食わせるとか先輩としての威厳ゼロかよ!!!!!!!!!

過去2回、お土産に関して怒りすぎたせいで喉がちぎれるかと思った。
いや、たぶん確実にちぎれていた。
しばらくは声が出なかったし、何を食べても血の味しかしなかった。
それから彼女は「あばちゃんはお土産に厳しいから…すごく怒る…」と怯えるようになった。

待ってくれ、よく考えてほしい。
お土産というものは、その土地でしか買えなくて、日持ちして、常温で保存ができて、人数分あって、小包装、それが基本だと思う。
わたしは人間工場で製造されるとき、きちんと"お土産の才能"を規定量入れてもらったのでお土産に関する常識はきちんとある。
大人として、社会人として当然の嗜みだ。

先日、職場が変わる同僚が「今までお世話になりました」と気持ちのお菓子を置いていった。
びっくりした。
置いてったお菓子はスナック菓子3袋だった。


さて、久しぶりに喉をちぎろうか。