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傘はある

健康で文化的な愛にあふれた生活

友人(目の奥が死んだ不幸なギャル)

友人(目の奥が死んだ不幸なギャル)からLINEがきた。
「生活力がなさすぎて死んでしまうかもしれない」と。
生活力がなさすぎて毎日ラー油かけごはんとハッピーターンを交互に食べてるらしい。

友人(目の奥が死んだ不幸なギャル)はわたしの大学の同級生で、かれこれ7〜8年の付き合いになる。
彼女は頭が良くてスタイル抜群で笑っちゃうぐらいの美女にも関わらず、いかんせん目の奥が死んでいて常になにかしらの不幸を背負っている。

普通だったら「男に遊ばれた〜わたしはそんなつもりなかったのに〜」「親がマジで最悪、こんな家に生まれたくなかった」と誰かのせいにしてしまうところだが、彼女は一切そんなこと言わない。
好きだった男に夜中に急に呼び出されてわざわざ会いに行ったにも関わらず「は?生理?意味なくね?なんで来たんだよ」と言い捨てられようが、学校から帰って母親が真顔で姑の遺影をシュレッダーにかけている現場を目撃しようが、深夜のススキノで見知らぬ人間の喧嘩を止めるために大雨の中土下座をしようが、彼女は「全てにおいてわたしの自業自得だよね」「わたしは不幸なのがサイコーに幸せなんだよね」とケラケラ笑って済ませる。

東京でホテル暮らしをしていたとき、彼女と会った。
最近は料理や洗濯や掃除に苦戦しながらも真面目に仕事しているらしい。
彼女の真新しい不幸エピソードはなく、お互いの近況だとか同期の誰がどこに就職しただとか、25歳OLとして至って普通の会話をした。
久しぶりに会えて楽しかったけれど、なんだかそれが少し嬉しくもあり寂しくもあった。

授業に遅刻してきたかと思えば行きずりの男に顔射されて失明したと大騒ぎしたり、一緒に勉強してるときになんの脈絡もなしに片乳を出してきたり、元彼に脅されてたまたま財布に入っていた25万円を手切れ金として渡したり、男から貢ぎ物としてもらった高級な魚介類を邪魔くさいからと発泡スチロールの箱ごとコンビニの前に捨てたり、もうそんなことしてた彼女はいない。
彼女と別れて、わたしも彼女も大人になったんだな…と感傷に浸りながらホテルに帰った。

数日後、珍しく彼女から電話がきた。
「電話とか珍しいね〜なした?」
「いや…○○って覚えてる?わたしが別れるときめちゃくちゃ揉めた」
「ああ〜懐かしいね、そいつがどうかしたの?」
「いや…なんかさ…この前たまたまニュース見てたら気になる事件あってさ」
「気になる事件…?」
「うん、胸騒ぎがしてさ…ふと思い立ってその事件について調べたら犯人がそいつだったさ…」
「は…?」
「ねぇ、わたし裁判に参考人として出廷させられないよね…?めちゃくちゃ困るんだけど…」
相変わらずだった。
相変わらず彼女は自分が過去にやらかした出来事の報復を恐れていた。

友人(目の奥が死んだ不幸なギャル)に、渋谷区では同性婚が認められたことと東京から大阪までタクシーで20万円かかる話をされた。
どうやらわたしに20万円渡すからタクシーに乗って東京まで来てそのあと渋谷区で一緒に暮らして欲しいらしい。
勘弁してくれ。