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傘はある

健康で文化的な愛にあふれた生活

パワーアップ

地元の友達と電話をした。

「最近どう?順調?」と聞かれたので「入居してわずか2カ月にも関わらず隣人トラブルが過激さを増して来月引越すことが決定してる、会社は13時間労働当たり前だしそもそも休日が少なくてノルマ達成しなきゃ抹殺される完全ブラック企業なんだよね、しかもガッツリパワハラ受けててメンタルが死にかけてるから職場も変わるさ」と答えた。

「友人(目の奥が死んだ不幸なギャル)は?元気?」と聞かれたので「キャバ嬢として働き始めたんだけどバツイチ子持ち低学歴のブサイク男に擦り寄られたせいでヤクザも絡んできてて黙って35万円を支払うか半永久的にヒモを養い続けるかの2択を迫られてる、あと栄養失調で死にかけてるらしい」と答えた。

「2人とも…パワーアップしすぎだよ…」と心配された。
人は普通に生活しているだけで無課金でも簡単にパワーアップできる。

おらこんな村いやだ

昔から変な人に好かれる。
好かれるというか、好まれる。
「アタシってぇ〜ぜんぜん好きじゃない人にめちゃくちゃ好かれるですぅ〜困っちゃいますぅ〜」とまんざらでもない女と一緒にしないでくれ。
わたしなそうじゃない、そうじゃないんだ。
ただ毎日を一生懸命生きているだけなのに、突然目の前に見ず知らずの人間の理解不能な性癖が現れるんだ。

変質者に遭遇したことなんて何度もある。
見ず知らずの男性に尻を触られたことも、見ず知らずの車に連れ込まれそうになったことも、見ず知らずの男性器を見せつけられたことも、当然ある。
でもそんなことは日常茶飯事すぎて、今更人に話してキャーキャー言うほどのことでもない。

躁鬱病でアル中かつオーバードーズ気味の自称ダーザインというおっさんに「あなたは…あなたは僕の女神です…」と言われて『永遠なんてなかった』というタイトルの全7部作の詩集のプレゼントされたこともある。
もらった詩集があまりにも不要だったのでブックオフに売りに行ったんだけど、もちろん値段なんてつくわけもなかったので今でも実家に保管してる。

膀胱炎になってしまい仕方なしにオムツを履いて複数のバンドが出演するライブイベントに行ったとき、ライブ中に顔の見えない屈強な男性に後ろから抱え込まれてオムツの中に手を突っ込まれ「ハァハァ…もしかして君もそういう趣味なの…?」と具をこねくり回されたこともある。
"君も"ってお前そういう趣味なのかよ、一緒にすんじゃねぇよ。
わたしが屈強な男に具をこねくり回されていたときにステージに立っていたザ50回転ズのことは今でも恨んでいるので、あれから一度も聴いていない。

通学中に全身チェック柄の服を身に纏った芸人のほっしゃんにそっくりのおっさんに長い時間目を見つめられながらものすごい強い力で尻を捻られたこともある。
痛かった、ものすごく痛かった。
あれからほっしゃんのことも嫌いになった。
最近ほっしゃんをテレビで観る機会が減って、わたしの心の平穏は保たれている。

すすきのを歩いていたら「君はドMだろう?僕にはわかるよ」と言われて女性の乳を釘でベニヤ板に打ち付けられ流血している写真を見せられながら「僕の3人目の奴隷にならないか?」と誘われ、恐怖のあまり「申し訳ございませんがわたしにはすでに忠誠を誓ったご主人様がおりますので…」と断って逃げたこともある。
忠誠を誓ったご主人様なんているわけないだろバカ!!!!

警察にも行った、お祓いにも行った。
なのに変わらない、なぜだ、なぜなんだ。
もうこんな生活いやだ!!!
北海道か?!
北海道という変態すらも全てを受け入れるほど広大な大地が悪いのか?!?!
おらこんな村いやだ!!!!!

北海道を離れ、大阪に住み始めて早2ヶ月。
今は実家暮らしで友達ゼロかつ彼女いない歴=年齢の童貞アラフォーにパワハラ紛いの愛情を全身に注がれている。

 

友人(目の奥が死んだ不幸なギャル) 2

友人(目の奥が死んだ不幸なギャル)から電話がきた。

「最近のわたしはわたしらしさが足りないと思って、キャバクラで働き始めたんだよね」
「働いてる店は若い女の子ばかりでさ、客に今年で26歳っつったらババアは勘弁してくれってソッコーでチェンジされるんだよね」
「まあわたしプライドないからなんとも思わないんだけどね、むしろ興奮するし」
なにやってんだよ。
スタートダッシュの加速がやばすぎるだろ。
さすが「わたしは不幸なのがサイコーに幸せなんだよね」と言うだけのことはある。

わたしと彼女は見た目も趣味も全然合わないけれど、付かず離れずの関係で不思議とずっと仲が良い。
彼女はわたしの話を聞いていないようでいてしっかり聞いて全部ちゃんと覚えているし、わたしがぐちゃぐちゃできちんとまとまっていない悩みをだらだらと話すと「こういうことでしょ」と端的な言葉で綺麗にまとめてくれるし、わたしが人間関係に悩んでいたときは「わたしはあばちゃんがきちんと考えて自分の言葉で話してるってわかってるから、わたしもあばちゃんに対してはきちんと考えて自分の言葉で話してるよ」と救ってもらった。

彼女は頭がいい。
勉強ができるのはもちろんだけど、様々な面で能力が高くて利口で人として頭がいい。
聞き上手なだけじゃなく言葉をたくさん知っていて話も上手いし、思慮深いので人間関係における自分のポジションをしっかり理解して器用に立ち回るし、どんな酷い扱いを受けても他人に対して"絶対に言ってはいけない言葉"は絶対に言わない。

わたしは彼女のそういうところを心から尊敬しているし、彼女のそういうところが心から大好きだ。
自分で言うのも恥ずかしい話だけれど、彼女もわたしのことが心から好きだと思う。
「北海道に帰りたいというよりも、あばちゃんの近くにいたい」
「何十人の友達よりも、あばちゃん1人がわたしにとって何よりも大切なんだよ」
「仕事やめて離島で一緒に暮らそうよ」
「あばちゃんと血の繋がりがないことが悔しくて仕方がない」
「会ったことないけどわたしのあばちゃんを横取りしたからあばちゃんの彼氏のこと嫌いなんだよね」
愛が重すぎる…。

3時間ぐらい長電話して「明日も仕事だしそろそろ…」と切ろうとしたら「わたしと仕事どっちが大切なの?!!今電話切ったらわたしこれからデリバリーホスト呼んで愛のないペッティングをされちゃうからね?!!?いいの!!?!」と脅しにもなってない脅しをされた。
デリバリーホストを呼んで愛のないペッティングをされた彼女の話を聞きたいと思い、わたしは躊躇なく電話を切った。

怪我の功名

わたしは鈍臭い。
就職して2ヶ月で仕事中に怪我をして、さっそく労災保険のお世話になった。

子供の頃から怪我が多く、ふつうに歩いていただけなのに電柱にぶつかったり、ふつうに自転車に乗ってただけなのに後輪に足が巻き込まれたり、ふつうに電車を待ってただけなのに駅のホームに落ちたり、どうも鈍臭い。

小さい頃、なんの段差もない平坦な道を歩いてただけなのにしょっちゅう転んでいた。
それがあまりにも多いので親や先生が「骨に異常があるんじゃないか…」「神経系の病気なんじゃ…」「脳に腫瘍かなんかがあってその影響できちんと歩けないんじゃ…」と心配しまくり、ありとあらゆる診療科をたらい回しにされた。
いろいろ調べてもらったがどこもかしこも全く異常なしの超健康優良児で、結果「ただ単にめちゃくちゃ鈍臭い」というだけだった。
決して安くはないお金を、わたしは鈍臭さを確認するためだけに親に遣わせていた。

幼稚園・小学校ではただ単に転ぶだけだったが、中学校に入ってからは鈍臭さにくだらなさと派手さがプラスされ、それは高校まで続いた。
マット運動で後転に失敗して首を捻挫したり、スキー授業で転んで首を捻挫したり、家に忘れ物を取りに行こうと自転車に乗ってる最中に突然意識を失いコンクリートに頭を打ち付けて脳震盪を起こしたり、下校中に横から来たトラックに轢かれたり、バレーボールのサーブ練習でボールを打った瞬間腕を肉離れしたり、卓球をしてるときにピンポン球を追いかけて防球ネットを跨いだらそのまま倒れて脚を肉離れしたり、移動教室で階段をのぼっていたらぎっくり腰になったり、他にもいろいろあったがその度に同級生や教師を震え上がらせていた。
当時付き合っていた彼氏には「お前とは手をつないで歩きたくない、俺の命がいくつあっても足りない」とまで言われた。

高校の修学旅行前の職員会議では「あいつは絶対怪我をするぞ!」「ホテル付近の内科と整形外科と救急・夜間診療してる病院をおさえとけ!」「本人には絶対に保険証を持って参加させましょう!」という話し合いが行われたらしい。
4泊5日の修学旅行では周りの心配をよそに怪我なく楽しく過ごせたが、最終日の前日の夜になぜか奥歯に菌が入りそのせいで顔面がパンパンに腫れた。
先生たちが「クッソ〜〜〜!!!内科でも外科でもなく歯医者だったか〜〜〜〜!!!!」と悔しがった話は、卒業して8年経った今でも母校に行くと言われる。

大学に入って、周りもだんだんわたしの鈍臭さに慣れてきてくれた。
少し道が悪いところでは誰かしらが手を引いてくれるようになったし、一緒に歩いてる友達は「もうすぐ段差あるからね!気をつけてね!」と前もって言ってくれるようになった。
わたしはほんとうに周りの人たちの優しさに生かされている、怪我の功名とはこのことだと思う。

就職して周りにできるだけ迷惑をかけないよう自分なりに気をつけていたつもりだったけれど、それはあくまでも"つもり"に過ぎないので、週に1回脚立から落ちたり1日に3回棚に激突したりしていたら同僚から「もしかして鈍臭い…?」と聞かれることが増えた。

そうなんだよ、わたしは隠しきれないほど根っから鈍臭いんだよ。

現代社会に馴染む

大して仲の良くない、きっとこれからも仲良くはならないであろう女性に「彼氏に付き合って半年で振られたんだよね、完全に遊ばれたわ」と朝一番に言われた。

"男に遊ばれた"ってセリフを生で聞いたのは初めてかもしれない。
"男に遊ばれた"って言っちゃうの、めちゃくちゃダサくないですか。
向こうの気が向いたときに呼び出されるような都合のいい関係でも、彼女がいるにも関わらず「お前といるときが一番気楽だわ〜」とアホみたいなことを言う男に雑に乳を揉まれても、終電なんてクソ食らえでわざわざ会いに行って上になったり下になったりテキトーに愛を囁き合ったりして、それらはすべて自分の意志でやったことで、そのときはそれなりに楽しかったんでしょ。
前に誰かが「一方的に遊ばれたんじゃないよ、2人で楽しく遊んだんでしょ」みたいなこと言ってたけれど、ほんとうにその通りだと思う。

ましてや、連絡先を交換して何度か2人で飲みに行って告白をしたりされたりして交際が始まってお互いの誕生日には素敵なお店でちょっとお高めのごはんを食べてクリスマスにはペアリングをプレゼントし合ってお互いを思って神社にお参りに行ってでもだんだんいろいろ上手くいかなくなってケジメをつけようと直接会って別れ話をして帰りの電車の中で人目も憚らず泣いた、なんてさ、完全に2人で楽しく遊んだやつじゃん。
最初から最後まで楽しかったやつじゃん。
しゃらくせぇ!!!!!

昔のわたしだったら、朝っぱらからそんな話を聞かされた瞬間に激昂して相手の髪の毛をつかんでコンクリートの上を引き摺り回し顔面に唾を吐きかけ吸ってた煙草で眉間に根性焼きをかましてたところだったけれど、最近のわたしはデミグラスソースがたっぷりかかったふわふわトロトロの卵のオムライスや割った瞬間肉汁が溢れ出てくるアツアツの小籠包を想像して、時間が勝手に過ぎて相手が飽きるのをヘラヘラピヨピヨしながら待てるようになった。

生粋の武闘派種族だったわたしも、ようやく現代社会に馴染めてきた気がする。

殴らせてください

今からわたしは他人を殴る。

世の中には、いろんな人がいる。
精神的に脆い人や少しだけ心が弱い人やしょっちゅう思い悩んでしまう人もいる。
わかってるんだけど、わかってるつもりになっているだけな気がする。

仲の良い友人たちはみんなちょっとバカだったり不運だったり根暗だったりするけれど、なんだかんだ頭が良くて自己分析がしっかりしていて上手く生きれている人たちが多い、気がする。
みんなきっとそれなりに解決できない悩みも抱えているとは思うし苦しいことだってあるんだろうけれど、言葉を聞いて言葉を選んで他人が接しやすいような表現をする、気がする。
ありがたいことに、そういう人とばっかり知り合って仲良くなってきた。

だから、少しだけ心が弱い人がものすごく心が弱ってしまった瞬間に遭遇すると、わたしはどうしたらいいのかわからない。
一緒に底まで堕ちる決意もないくせに、生半可な気持ちで救ってあげたいと思ってしまうわたしはほんとうにだめだ。
「僕はものすごくメンタルがやられてしまっているときは君に会いたくないと思う」と言われたことがある。
それを言った人を恨んでいるとか腹が立ったとかそういうのではないしそれこそ皮肉でもなんでもなくて、なんとなくふとしたときに思い出す。

わたしは明るいしポジティブだし強いけれど、それをインターネットで書くとボコボコにされる。
幸せアピールやめろとか、わたし恵まれてます自慢やめろとか、ボコボコにされる。
なんだよ、なにが悪いんだよ。
暗いことを書いてもつらかったことを書いても怒られないのに、明るいことや幸せだったことを書くと難癖をつけられるのがわからない。
同じじゃん、ただ逆なだけじゃん。
その日あった出来事を書いて、それがマイナスの内容なのかプラスの内容なのかの違いだけで、別に変わらないじゃん。
キンタマ潰すぞ、クソッタレ。

こういう風な考え方をした方が相手を不快にさせないんじゃないかとか、ほんとうは苦手だしできることならしないで済みたいけれどこういう接し方をした方がのちのち得をするんじゃないかとか、25年間かけてたくさん失敗してたくさん反省してたくさん努力して、そういうことをしてきたわたしの存在は無視するのか。

それなりに怒りがあって、インターネットが下手っぴで、そのくせ語彙力が乏しくて、涙が出てくる。
みんな黙って左頬を差し出してくれてありがとう。

相変わらず

仕事の関係で大阪に住んでいる高校の同級生と会った。
相変わらずだった。
相変わらず顔が薄くて、相変わらず色が白くて、相変わらず猫背で、相変わらず暗くて、相変わらず声が小さいせいで会話の内容がほとんど聞き取れなくて、相変わらずわたしへの愛がすごかった。

高校のときは一度も同じクラスにはならなかったけれど、なぜかめちゃくちゃ仲が良くてよく一緒に帰っていた。
公園のブランコに乗ってコンビニで買った肉まんを食べながら「おれ、脱童貞のとき挿入する穴を間違えてしまうかもしれない…」という彼のアホみたいな相談にわたしも真剣に答えたりしていた。

大阪での暮らしについて聞いたら「会社が倒産するかもしれなくて、友達は2人しかいなくて、休みの日はずっと枕を抱きしめてる」と言っていた。
「相変わらずだね」と笑ってしまった。

大阪での暮らしについて聞かれたので「寝起きの格好で歩いてたらユーチューバーに話しかけられて配信に参加したらリスナーに神降臨と崇められたり、隣人と騒音トラブルで揉めてちょっとだけ生活がしにくかったり、仕事帰りに電車の中で知らないおっさんに紙袋で殴られたりしてる」と言った。
「相変わらずだね」と笑われてしまった。
相変わらずってなんだよ。

彼とはかれこれ10年の付き合いになるけれど、出会ったときからわたしにめちゃくちゃ甘くて久しぶりに会ってもわたしにめちゃくちゃ甘かった。
わたしの話をひたすらウンウン聞いたあと「いや〜おれやっぱりあばちゃんのこと大好きだわ〜サイコーだわ〜」と言いながら飲み代を全部奢ってくれて、会社が倒産するかもしれないという不安を抱えたまま明日の仕事に備えて帰っていった。

昔からの知り合いと気兼ねなく楽しい酒が飲めてほどよく酔っぱらいサイコーの気分だったので、その足で彼氏の家に行って彼氏が買い置きしていたお高めの紅茶を飲んでお高めのわらび餅を食べた。
サイコーの休日だった。

相変わらずわたしは人の金で贅沢をしてしまった。